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世界へ羽ばたけ!誰もが笑顔になれる農福連携「ソルファコミュニティ」

茫々たる遊休地を、重機を使わず、人の手で開墾した8ヶ所のファーム。それぞれの土壌に合わせて、季節の島野菜や果物を自然栽培し、珈琲やバニラ事業まで幅広く手掛ける「合同会社ソルファコミュニティ」。地元で「ソルファ」「ソルファさん」と親しまれています。

 

「人にも環境にも優しい農業を通じ、関わるすべての人が、ありのままで笑顔になれるコミュニティ」を目指し、ソルファは平成24年に設立。就労継続支援A型事業所(※1)を運営されています。

 

 

 ※1 … 障がい者総合支援法における就労系障がい福祉サービスには、就労移行支援、就労継続支援A型、就労継続支援B型、就労定着支援の4種類のサービスがあります。就労継続支援A型は、一般企業に雇用されることが困難であって、雇用契約に基づく就労が可能である方に対して、雇用契約の締結等による就労の機会の提供及び生産活動の機会の提供を行います。

【出典】厚生労働省サイト『障がい者に対する就労支援について』

 

 



合計13,000坪もの広大なファームでさまざまな取り組みをされているソルファですが、「ソルファについて一番知っていただきたいことは、農福連携(※2)です!」と語る代表の玉城卓(たまき・すぐる)さん。

 

※2 … 農福連携(農業と福祉の連携)は、障がい者が農業分野での活躍を通じ、自信や生きがいを持って社会参画を実現していく取組。農福連携の取組は、障がい者の就労や生きがい等の場の創出となるだけでなく、農業就業人口の減少や高齢化が進む農業分野において、新たな働き手の確保につながります。

【出典】厚生労働省『農林水産省における農福連携の推進について』

 

 ソルファの数々の取り組みのなかから、①県も国も推進している取り組み「農福連携」と自然栽培、②誰もが笑顔になれる農業体験、③北中城村と国が応援するバニラ事業についてご紹介いたします。

①土の中も人間社会も多様性が大切 ― 自然栽培から見える農業と福祉の親和性

ソルファの8ヶ所のファームはいずれも北中城村熱田(あった)のソルファ事務所から車で5~10分圏内。ファームにはそれぞれ名前が付けられています。

 

ファームのひとつ、「農天ファーム」へご案内いただきました。こちらは約300坪のファームで、季節の島野菜をメインに自然栽培を行っています。

 

「自然栽培とは、農薬も肥料も使用せず、太陽・土・水・微生物といった自然界の力を活かし、植物が本来持つ力で栽培することなんです。自然栽培には県外の方が敏感ですね」と玉城さん。

 

「自然栽培では、雑草は基本的には地表に出ている部分を刈り取り、根っこは残しています。なぜなら、根が伸びていく際に土を耕すからです。

 

また、微生物は根っこに集まりますので、さまざまな種類の根っこがあれば、それだけ微生物の種類も増えるんですよ。小さな社会が土の中にもあるということです。

 

殺菌剤のような農薬は、良い菌も悪い菌も殺してしまいます。土の中に多様性がなくなると、病気が発生しやすくなるなど、あまり好ましくないんですよ。イメージしていただくには…。例えば、いま掘っている人参」。

 

玉城さんの熱心な解説は続きます。

 

 「人参のために人参用の農薬を使うと、人参の根っこに住み着いている微生物は生き残りますが、そのほかの微生物はすべて死滅します。

 

そこへ病気が発生した場合、人参にいる微生物が勝てる病気であれば何も問題はありません。しかし、人参の微生物が苦手とする病気だったら、病気に負けて人参そのものもダメになってしまうんですよ。

 

もし、土の中にさまざまな微生物が住んでいれば、その病気に打ち勝てる微生物がいるかもしれません。そうすれば、人参も病気を乗り越えることができます。つまり、自然栽培は微生物の多様性も活かすということなんです」。

 

 「微生物に多様性があれば、いろんなケース、さまざまな困難に対応できます。これは人間社会と同じです。いろんな人が働く社会、多様性のある社会が困難に強いんですよね。人間の世界も、微生物の世界も、どちらも多様性が大切ということです。だから、農業と福祉は親和性が強いんですよ」。

 

土の中と人間社会の思いがけない共通点を知りました。農業と福祉の共通するキーワードは「多様性」。玉城さんのわかりやすい解説から、自然栽培による農業と福祉の親和性をイメージすることができました。

 

 「ソルファでは、支援を受けられている方を“メンバー”と呼んでいます。職員7名、メンバー20名、総勢27名で8つのファームを運営しています」と玉城さん。

 

メンバーという呼び方は、共に働く仲間として、分け隔てなく親しみがあってステキだなと感じます。

 

「ソルファの強みは、福祉のプロがいるので福祉的なニーズのある方にも対応できる点です」。そう話される玉城さんご自身も、もともと福祉のお仕事をされていました。ソルファで受け入れている農業体験においても、福祉の専門家がいることで、誰もが安心してチャレンジできますね。

②誰もが笑顔になれるソルファの農業体験

 

 
  • 今回はふたりの女性に農天ファームで農業体験にチャレンジしていただきます。「農業はしたことありますか?」との問いに、「子どもの頃に芋掘りしたくらいかな」と照れ笑いのおふたり。

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「葉っぱが黄色がかったものを掘ってみてください」とメンバーさんのアドバイスを受けて、スコップを手に人参掘りをスタート!

  

 小さな人参を掘って、掘って、掘っていきます。

 

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 「楽しい!」

「わー、かわいい!」

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 「最初は人参を傷つけないよう、おそるおそる掘っていましたが、慣れてくるとこれくらいイケるかな?と思うようになりましたね」。「はじめは少し難しく感じましたけど、人参が抜けた時、かわいいって思いました!」

 
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土いじりは間違いなく、人を癒やすようです。農業体験が初めての彼女たちも自然と笑みがこぼれ、会話が弾みました。

「今度は子どもも連れて家族で来たいです」

「次回は収穫したお野菜でカレーまで作ってみたい!」

  

 

 
  •  「いままでスーパーで、なるべくキレイな野菜を選んでいました。見た目ばかり気にしていたけど、実際に自分で農業を体験してみると、小さな人参も不格好な人参も愛おしく思えました」
 

 

農業体験は大人の方にも気付きがあるんですね。さぁ、あなたもソルファで農業体験をチャレンジされてみては?

 

北中城から全国へ! 世界へ羽ばたけソルファのバニラ

アイスクリームやプリンなど、洋菓子作りに広く使われる「バニラ」。国産はとても希少で、世界シェアの半数以上をマダガスカルとインドネシアが占めています。

 

生産までに長い年月と膨大な労力、高度な加工技術が必要なため、バニラは世界的に高値で取引される貴重なスパイス。世界最高品質のバニラはマダガスカル産とされ、「バニラ1キロあたりの価格が貴金属の銀を超える」とニュースになったほどです。

 

ソルファは現在3ヶ所でバニラを栽培しており、合わせて7,000坪と国内最大級のバニラ・ファームを運営されています。

 

農天ファームをあとに、バニラ・ファームのひとつ「フェニックス」へご案内いただきました。

 

この日は涼しくハウスのなかは少し湿度を感じる程度、爽やかな黄緑のカーテンが続きます。初めて目にするバニラは意外やラン科だそう。

 

「バニラは添え木を抱き込むように伸びていくつる性植物で、10メートル以上成長します。太陽は好きだけど直射日光はダメ。水は好きだけど水たまりはキライ。と少しワガママなんですよ。

 

バニラは1株に100輪の花をつけるのですが、受粉は人の手で人工受粉するしかありません。花が咲くのは5~6月の一日だけ。しかも午前中に咲いて午後には萎んでしまいます。そんなバニラが1万株あるんですよ」と玉城さんはバニラ栽培の大変さを語られます。

 

バニラ・スパイスとなるのは、開花後の“種子莢(さや)”の部分です。バニラの甘く芳醇な香りは、発酵と乾燥を繰り返す複雑な「キュアリング」と呼ばれる加工技術を経ることで発せられます。

 

良質なバニラを栽培することに加え、難易度の高いキュアリングが商品の価値を左右すると言っても過言ではありません。

 


「第3工程ですが」と、キュアリング中のバニラを見せていただきました。マスクを取ると、1メートルほど離れていても甘~いおいしそうなバニラの香りが漂います。これほど香り広がるとは驚きです。
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 「最初にキュアリングの研究からはじめてバニラの栽培生産へ至りました。

 

東京農業大学と共同研究を行っており、調査のために農大の先生と一緒にマダガスカル、バニラ原産地のメキシコ、インドネシアなど、海外にも足を運びました。マダガスカルは電気がなかったし、バニラ盗難防止のために夜警を雇ったりするんですよ」。玉城さんはユニークな経験もされており、バニラだけで本が一冊書けそうです。

 

研究に研究を重ね、特許を取得。いよいよ来年、2024年の出荷を予定されています。

 

「キュアリングを行うには高度な設備が必要です。農家さんが各々で持つのは大変ですので、バニラ事業が軌道に乗れば、近隣の農家さんにバニラの苗木を配って栽培していただき、適正価格で買い取り、ソルファでキュアリングを行い商品化するという流れが作れると思います。うまくいけば、(障がい者)手帳がない方にも働いていただけます」と、そう遠くはない将来を玉城さんは語られます。

 

高収益を見込める高品質バニラの栽培から加工まで、一連の工程を安定して行えるようになれば、雇用にも繋がり、北中城村のブランディングにも一役買う。と良いこと尽くめ。

 

このような体制を整えようとされているソルファの「バニラビーンズプロジェクト(おきなわ産バニラビーンズ生産体制整備事業)」は、国と北中城村が応援する一大プロジェクトなのです。

 

ソルファのバニラについて、全国のパティシエや農家さんからのお問合せも増えてきており、「ソルファのバニラは障がい者の方の雇用支援にも繋がるので」と高額買い取りのオファーをされている企業さんもあるそう。

 

ソルファのバニラ事業が軌道に乗れば、雇用が生まれ、バニラは北中城から全国へ。いえ、世界のバニラ市場へ羽ばたくことも夢ではありません。農福連携で地道な努力を積み重ねているソルファ。ソルファの明るい未来にワクワクします。

 

全国のみなさま、ぜひソルファを応援してくださいね。

 

「そるべじ(ソルファコミュニティの自然栽培青果)」お買い物情報

自然栽培で育てられたソルファの野菜は「そるべじ」と呼ばれ、北中城村の「イオンモール沖縄ライカム」の産直コーナーに並んでいます。毎朝採れたての新鮮な自然栽培の青果が365日、あなたをお待ちしていますよ。直接ソルファ事務所でのご購入も可能です。ぜひチェックしてみてください。

 

合同会社ソルファコミュニティ

住所/沖縄県中頭郡北中城村熱田277

電話/098-989-8880

https://solfa.biz

※農業体験や青果のご購入などお気軽にお問合せください。

 

沖縄CLIPフォトライター 安積美加 https://okinawaclip.com/ja/detail/1550

 
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最終更新日:2023.03.14