世界遺産 中城城跡

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城郭考古学者も絶賛! 素晴らしい城壁がいまなお残る「中城城跡」

「琉球王国のグスク及び関連遺産群」のひとつとして、世界遺産に登録されている「中城城跡(なかぐすくじょうあと)」は、東シナ海と太平洋を望むことができる丘陵の上にあり、沖縄県内にある大小合わせて約300のグスクのうちのひとつです。

 

城郭考古学者の千田 嘉博(せんだよしひろ)さんが城壁の素晴らしさをテレビで紹介して注目が集まり、お城めぐりが好きな方には、一目置かれる存在となっています。

 

「中城村・北中城村文化財案内人グスクの会」に所属する安里義夫(あさとよしお)さんは定年退職後、ご自身の健康のためにガイド養成講座を受講し、これまでに9年間で約3,000組のお客様を案内してきましたベテランガイドです。

 

そんな安里さんに「中城城跡」を案内していただき、お話しを伺いました。

 

カンジャーガマ(鍛冶屋跡)

 

入り口から登り始めること5分、まず最初に見えてきたのは「カンジャーガマ(鍛冶屋跡)」です。ここは鍛冶が行われていたと伝わる場所。それがお城のためか、村民のためかは定かではありません。「それがもし村民のための農具を作っていたとしたら、とっても村民思いで心強いグスクだったでしょうね」と安里さんのガイドで想像が膨らみます。

 

続いて「カンジャーガマ(鍛冶屋跡)」の反対側を指差して「こちらからの景色もぜひ楽しんでください」と案内された場所へ向かいました。

 

そこは海に映る雲の影を見下ろすことができるほど高く、心地よい風が吹き抜ける気持ちの良い場所でした。きっと誰もが両手を広げて深呼吸したくなることでしょう。

 

火矢(ヒヤー)の穴

 

いよいよ、城壁の中へと進んでいきます。正門の前で安里さんが立ち止まり、城壁の方を指差しました。よく見ると穴が空いているのが見えます。中国、明の時代に開発された銃器である火矢(ヒヤー)を、その穴から出して威嚇射撃していたそうです。

※火矢(ヒヤー)の穴(狭間)の使用方法については諸説あります。

 

話題を呼んだ刻印石の発見!

 

「中城城跡」への愛情が滲み出ていている安里さんは、ニコニコしながら「こっちにもっと面白いものがありますよ」と楽しそうに案内してくれます。

 

それは城壁の石に彫り刻まれた刻印です。2021年には新たに約60個の刻印石が見つかり、今後もさらに見つかる可能性が高いと言われ、話題になりました。

 

その刻印は個人や集団の象徴ではないかと言われています。あるいは、構造的に重要な場所を示すため設置したのかなど諸説ありますが、今のところ確実なことは分かっていません。

 

 

三種類の石積み

 

 

 

さらに進むと安里さんが石積みの違いを教えてくれました。長い間、増築を繰り返した「中城城跡」だからこそ石積み技術も時代に合わせて変化してきました。石をそのまま積み上げたような「野面(のずら)積み」、長方形に整形して積み上げた「布積み」、石の面を多角形に加工し組み合わせて積み上げた「あいかた積み」の三種類の石積みを見ることができます。

 

それぞれの石積みの違いを見比べてみると、「あいかた積み」は複雑な形に石を切り積んだもので、時間も手間も惜しまず積まれたのではないかと、その過酷さを想像してしまいます。

 

 

荘厳な印象を受ける「二の郭」

 

そして「中城城跡」と言えば、この場所を思い描く人は多いのではないでしょうか? 荘厳な印象があり、とても綺麗に城壁が残っている「一の郭」です。この城郭の中に立派な木造の建物があったことが想像できます。ぜひ「二の郭」から「一の郭」を見ることをお勧めします。その全貌がはっきりと見ることができ、その壮大なスケールにきっと驚くことでしょう。

 

そしてその「二の郭」は登ることのできる数少ない城壁。「二の郭」と「三の郭」の城壁の曲線が綺麗にご覧いただけます。当時の築城技術の高さを感じることができ、またそこからの見晴らしもとても美しいです。

 

さらに振り返って見ると、「一の郭」の門と正面の門が一直線上に並んでおり、正確な石積み技術の高さが伺われます。ぜひ門が一直線に並んで見える場所を探してみてくださいね。

 

 

城壁が綺麗に残る理由

14世紀から15世紀の間に築かれたと推測されている「中城城跡」が、他のグスクよりはるかに城壁が綺麗に残っていることについて、いくつかの理由があります。

 

 

一つ目は、頑丈な石灰岩を利用して、城壁が作られているから。だからこそ、石積みが崩れることもなく頑丈な城壁ができあがったとされています。

 

また安里さんは「自然にある岩盤も利用しているため、早く城壁を完成させたかったのではないか」という推測も教えてくれました。

 

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2つ目は、「中城城跡」が持つ、北の郭にある大井戸(ウフガー)、西の郭にある夫婦井戸(ミートゥガー)と呼ばれる2つの井戸です。

 

安里さん手作りの「中城城跡」の断面図を見せてもらうと、高低差を利用した水の流れを意識して築城することで、水はけが良い環境を作り出していたことがわかります。

 

その構造の理由や意図については文献が無く、定かではありません。文献が残っていないからこそ、様々な推測ができるのも「中城城跡」の楽しみ方の1つではないでしょうか。

 

 

立ち寄るだけではもったいないその魅力

 

「沖縄観光で『中城城跡』に立ち寄る人は多いけど、ガイドの案内を利用する人はまだまだ少ないです」。安里さんが所属する中城村・北中城村文化財案内人グスクの会のガイドは無料で利用することができます。ぜひガイドを利用して見学してみてくださいね。立ち寄るだけではもったいないその魅力を存分に気付かせてくれるはずです。

 

 

 

 

沖縄CLIPフォトライター (株)村上佑写真事務所 https://okinawaclip.com/ja/detail/2046

 

INFORMATION

基本情報

営業時間 観覧受付時間/8:30 〜 17:00(5〜9月の間は18:00まで)
定休日 年中無休
平均予算 大人:400円(団体300円)・中/高生:300円(団体200円)・小学生:200円(団体100円)※団体扱いは20名以上
電話番号 098-935-5719
予約 不要
駐車場 あり
公式URL http://www.nakagusuku-jo.jp/
住所 史跡住所:沖縄県中頭郡中城村字泊1258番地
事務局住所:沖縄県中頭郡北中城村字大城503番地
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